シリーズ第4弾 Part.2【就職するならどっち?】


就職するならどっち?

はじめに

 就職するなら“もちろん公務員!!”と言いたいところですが、高等学校の進路指導ご担当先生におかれましては周知の通り、民間企業は売り手市場で「就職」しやすい時代です。2018年3月の新規高等学校卒業生における就職状況について、文部科学省が発表している調査報告を見ても、全国新規高等学校卒業生の就職率は98.1%となっており、中でも「工業系」の技術職を筆頭に就職率が非常に高い現状となっています。

表

 このような状況の中で“就職したい”と相談に来る生徒(保護者)様に対し、就職試験のスケジュールの関係で、公務員と民間企業のどちらを選択させるべきか、悩まれながら指導されている先生も多いのではないでしょうか。今回の投稿では「就職するならどっち?」をメインテーマに生徒(保護者)様への就職の勧め方について、東京アカデミーが考える公務員と民間企業それぞれの特徴と向いている性向、高校生にあまり知られていない公務員の職種(仕事)・実態を取り上げ、「就職」の勧め方についてご提案いたしますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。

民間企業と公務員、それぞれの特徴と向いている性向

民間企業の特徴・向いている性向

 (1)会社や自分の利益優先
自身の特性や能力をフルに発揮し、極端に言えば、生活を切り詰めて、家族を犠牲にしてでも会社の拡大に奔走し、ライバル他社や社員を蹴散らしていく。その結果、会社はもとより個人収入を増やし地位や名声を得ていき、豊かな人生を送る「チャンス」があります。
 (2)向き・不向きがはっきり出る
拡大させることへのエネルギーや競争心があり、会社利益、個人収入を最大限増やすことに挑戦したいとういう夢が持てる人は向いています。
しかし、特性や能力がその仕事(企業)に合っていなかった場合、激しい競争にはついていけず、個人収入も増えず、転職を余儀なくされるか、疎外感や敗北感を持ち続け、低収入のままの生活に甘んじる怖さもあります。
 (3)離職率が高い
どうしてもその仕事への向き不向きや景気の動向に左右され、離職率が高くなっています。厚生労働省の2016年度調査では、新規高等学校卒就職者の1年以内の離職率が約20%、2年以内が約32%(1年目に離職した者を含む)、3年以内が約40%(1~2年目に離職した者を含む)と高くなっています。同じ調査の新規大学卒就職者の3年以内の離職率約32%を上回っており、新規高等学校卒就職者の方が「その仕事に向いていない」や「会社に貢献できていない」と感じて離職する人の割合が高く、この結果を見ても自分の特性や能力に合う仕事になかなか出会えていない、競争に打ち勝つ事ができていない人がいることを示していると言えます。

公務員の特徴・向いている性向

 (1)国民(県民・市民)の利益(生活)優先
公務員でも残業はありますし、昇進試験もあります。しかし、他の自治体と競争し、蹴散らして税収を増やしたり、他の職員を出し抜いて個人の成果を伸ばしたりすることもありません。国民(県民・市民)全体の公平な奉仕者であり、国家公務員は財務省、法務省、厚生労働省など、各省庁に所属し、行政などの分野でスペシャリストとして、地方公務員は47の都道府県、もしくは、1700余りある政令指定都市や市町村のいずれかに所属し、行政、警察、消防などの分野で活躍します。
 (2)不向きでもゆっくり確実に仕事に取り組める
職員間では、能力のある人に仕事や役割が集中し給与が変動するのではなく、協力、協働しながら同じように仕事に打ち込める環境です。つまり、周りと歩調を合わせて、必要な仕事を一つ一つ落ち着いて積み上げる、息の長い仕事、小さな成果を少しずつ積み上げる仕事です。家族を犠牲にしたりしてまでも大きな成果を短期的に上げる仕事ではありません。よって生活や家族、趣味などでも、堅実に確実に少しずつゆとりを重ねていくことが可能です。普通の平均的な生活に幸福を感じる人には最適と言えます。
 (3)離職率は低い
これらは公務員の離職率の低さに表れています。総務省による「2016年度 地方公務員の退職者状況調査」によると、一般行政職の方の普通退職者は全国で6,459人となっています。定年退職や懲戒免職などではなく、自分で希望して辞めた人数です。地方公務員の一般行政職員数が840,315人(総務省 2016年度 地方公務員給与実態調査より)なので、離職率は0.77%となります。民間企業の離職率と比べれば、どれだけ少ないかがわかると思います。また、この離職率の低さには、他にも要因があると考えられます。そちらは「公務員は仕事を変えられる!?」にてご紹介致します。
 (4)民間では絶対にできない仕事(やりがい)がある。
法律など権限(かつ国家基盤)の元で仕事をする警察官は、犯罪の予防や証拠の収集・保全、犯罪の鎮圧、犯人を逮捕し、犯罪から県民・市民を守り抜く使命感を持って働くことができます。そういった権限について、公務員の公安職(海上保安官や入国警備官、皇宮護衛官、刑務官、消防官)の仕事は民間ではできない仕事と言えるでしょう。また、国家一般職税関勤務であれば、日本に入ってくる人やモノの通関業務をすべて行い、地方検察庁は被疑者を起訴できる唯一の機関です。そして、地方公務員でも、人々がより豊かな生活を送れるように、あらゆる分野で制度そのものの変更や補助金の交付、許可、認可など、民間ではできない権限を持って基盤作りをしています。つまり、もし公務員の仕事がなければ、人々の生活も民間企業の活動も、ルールや規則のない無秩序でやりたい放題の世の中になってしまうということになります。この平和で民主的な現代国家の基盤を支える仕事である点が、公務員の大きなやりがいと言えます。

 それぞれの特徴・向いている性向は上記の通りにまとめられます。上記のことを踏まえ、生徒様へ再度考させるよう、促して頂ければと思います。特定の分野に対して秀でた才能や能力があれば、それを最大限生かし組織へ貢献し自尊心や、やりがいを満たせる民間企業で活躍すれば、平均的な日本人以上に豊かな生活が送れる可能性があります。しかし、才能はごく普通でも、公務員として働けば、仕事も生活も平均的で安定した生活が送れる可能性は高いです。さぁ就職するならどっち!?

公務員は仕事を変えられる!?

 大胆なサブテーマですが、上記の通り就職しやすい時代だからこそ注視して頂きたことがございます。それは上記でもご紹介した新規高等学校卒就職者の離職状況についてです。
 その退職者の中でも主な理由が「仕事が自分に合わなかった」が多く(労働政策研究・研修機構 資料シリーズNo.171より)、「仕事の質・量」にストレスを感じて〔厚生労働省 労働安全衛生調査(実態調査)より〕退職に至る人もおり、“いかに就職状況が良くても、その仕事を長く続けていくのか…。転職しないだろうか…。”と考えさせられてしまうものです。
 民間企業における新規高等学校卒就職者の3年目までの離職率が約40%(1年以内の離職率が約20%)と高い状況の中、公務員の離職率は0.77%と低く、先日の出来事ですが2017年4月より公務員として働きだした弊社OBが2018年8月に校舎へ来校し、これまで経験した「働くことの責任感」や「仕事内容の難しさ」などを話しておりました。その話の最後に「今は大変な部署だけど、異動もあるので辛くても頑張ります!!」と言っておりました。
 公務員の離職率が低い理由には、仕事が自分に合わなくても異なる職種の仕事に就けることや、弊社OBの話にもあるように異動よって多くの部署に就くことができることも要因のひとつではないかと考えます。そのことについて、国家公務員の特徴がある職種(仕事)と地方公務員の実態をご紹介します。

 まずは高卒程度で受験できる国家公務員の「税務職員」についてです。この「税務職員」の仕事は国税庁や国税局で税金の徴収・賦課を行う、いわば“事務職”です。“税”のスペシャリストとして、公共サービスを支えるために働きます。“事務職”と聞くと体育会系の生徒様には向かないと考える方もいらっしゃると思われますが、公共サービスが滞り被害が全国民に及ぶ“脱税”という犯罪を取り締まり、税の申告に対して調査・指導・差し押さえを行うと言った“公安職”のような仕事に就くことができます。このように“事務職”ながら“公安職”のような仕事ができるのは面白いと思います。
 また、国家公務員には「大学校」という道もあります。防衛大学校や海上保安大学校、気象大学校、航空保安大学校は4年制となっており、専門的な勉強を学んだあと、基本的には本庁などで働いて、その道で幹部を目指す仕事となりますが、中には転職して民間就職され、大学校で学んだことを活かした仕事についている方もいるようです。進学希望ながら経済的事情で進学を断念せざる得ない生徒様にとっては、選択肢の一つとして提案できるものと考えます。
 次に地方公務員の都道府県や市町村職員についてです。こちらも“事務職”ですが、まちづくりや福祉、教育といった幅広い分野を対象とした仕事があり、区役所や出先機関などで働くことができます。地方公務員の異動について、新潟大学の研究論説「地方公務員の人事異動と昇進構造の分析」のある県の職員の異動についてのデータを見ると、高校卒の方が30歳までに異動する平均回数は4.8回、また定年まで勤務する間(平均40.9年)の異動回数は平均11.9回(平均すると3.4年に1回の異動)行われるというデータもあり、部間の異動で幅広い業務・職場で就くことができます。また、昇進や職場環境が変わることで、上記の退職理由に多い「仕事が自分に合わなかった」や「仕事の質・量」がストレスに感じることも少なくなっているのだと思います。

 これらの職種(仕事)や実態につきましては、生徒(保護者)様にあまり知られていないものと思いますので、相談時のネタとしてご利用頂ければと思います。

今まで民間企業の対策しかしていなかったという人でも!!

 長く仕事を続けられる公務員への就職を目指すとなった場合、民間企業の就職試験では「SPI」系の試験が多く使われているため、公務員専用の対策が更に必要になってくると考えている生徒(保護者)様も多いのではないでしょうか。公務員は「教養(基礎能力)試験」が実施され、勉強する科目数は増え、確かに対策は異なる部分もあります。しかし、2018年度から全地方公共団体(1,765団体)の92.6%の団体に問題を提供している「日本人事試験研究センター」より『Light(基礎力)タイプ』の民間就職を目指している人も受験しやすい問題を公務員試験に提供できるように発表がありました。同HPシリーズ2 Part11「知っておきたい、今どき公務員試験」において解説しておりますので、そちらで変更内容をご確認頂ければと思います。

 そして、2018年7月22日(大卒・短大卒程度公務員試験)に行われた公務員試験から初めて導入され、その日に実施したいずれかの職種でLight(基礎力)タイプを使用した団体が19.9%という結果になったそうです。北海道では2018年9月16日に実施された旭川市消防職員採用試験(短大卒・高卒程度)に導入されました。
 Lightタイプを導入した自治体の理由について、「公務員試験の受験対策をしていない民間志望者の受験も見込める」という意見もあり、今後も「今回の試験は様子を見ている」という公共団体からの利用も増えていく可能性は十分高いと思われ、2018年10月14日に行われる高卒程度公務員の試験や次年度以降の試験への導入にも注目していく必要があるでしょう。
 このように公務員専用の対策ではなく、民間企業の対策をしている人も受験しやすい問題の導入もありますので、生徒(保護者)様には「今の公務員試験は昔とは違い、民間企業を目指す対策もしている人も受けやすい問題が導入されている自治体もあるので、公務員も受験してみてはどうだろうか?」と迷っている生徒様の背中を押して頂ければと思います。

東京アカデミーでの指導ポリシー

弊社の受験先職種の選択における指導では、大きく以下の2点を心がけています。

(1)公務員の職種や仕事について、その中身や魅力、やりがい、社会貢献度、そして、課題や苦労を紹介し、まずは、「世の中にはどんな公務員の仕事があるかを余すことなく知る」ことを重視しています。年齢を経てから「あの仕事に就いておけばよかった」と後悔しないよう、「まずは、たくさんの仕事、職種を知る」ことを大切にしています。
⇒通常の教科指導の講義に留まらず、「職種研究ガイダンス」「官庁自治体説明会」「卒業生(合格者)座談会」などにおいて、客観的な視点からの紹介、働いている方からの紹介、過去同じように悩みその職業についた卒業生からの紹介など、多面的に仕事発見できる場を設けています。また、弊社が企画し、グループ企業のテレコムスタッフが制作したテレビ番組「資格図鑑」では、国家公務員から地方行政職、公安職、資格職まで全国多数の現職公務員の方の仕事を紹介しています。この映像コンテンツも受講生指導に活かしています。
(2)自分自身の特性や長所、資質、能力を理解し、かつ、10年後、20年後、30年後の生活をイメージさせながら、どの仕事に就けば、豊かな人生が歩めるか。自己分析と将来予想図を描く作業を重視しています。
⇒いくら魅力ある仕事でも、自分の特性に合っていなければ、その人にとっては退屈な仕事でしかありません。若い自由なうちは自分のペースに合い楽しさを感じる仕事でも、将来、結婚し家庭を築き子どもができた環境では、それが窮屈になることも少なくありません。受講生には、今だけを考えるのではなく、将来、生活環境が変わったときも、豊かにやりがいをもって誇れる仕事であるかも考えるように指導しています。そこで、「面接講義」「面接指導」「面接カード添削」を通して、自己分析、採用後に再現性のある経験の掘り起こし、採用10年後、20年後、30年後の姿・イメージの説明など、過去、現在、未来が説明できるような深い指導を行っています。

おわりに

 上記の通り、民間企業と公務員の特徴や高校生にあまり知られていない公務員の職種(仕事)・実態、そして変わりつつある試験内容、弊社の指導ポリシーについてご理解頂けたかと思います。
 当HPを参考に、これから公務員を目指される(既に目指されている)生徒様に対して、最後にアドバイスをしていただきたいことは、(働いてみたい)職種・自治体でどんなことをしてみたいかイメージをさせることです。インターンシップに積極的に参加することもよいですが、例えば自治体を志望しているのであれば、働いてみたい自治体の良さをどう発展させ、その得た税収でどんなまちづくりをするか、大きなイメージを持つととても楽しいと思います。その想いが、公務員合格や採用後のやりがいに繋がると考えます。  最後に、民間就職を目指している人も受験しやすい『Light(基礎力)タイプ』の試験を導入している自治体につきましては、弊社受講生や自治体への聞き取り調査にて、徹底的に情報収集してまいります。このような公務員試験の情報を提供できる公務員専門予備校はないと自負しております。お近くの東京アカデミーに頼って頂ければと思います。
 次回は高等学校の団体申込などで年間2万人以上の方に受験して頂いている弊社の高校卒程度公務員模擬試験について、現役合格を目指すための『模試の活用法』を掲載いたします。「模擬試験を受けてそのまま…」という方や「どのように復習に利用すればよいか解らない」という方に必見です。ぜひご期待ください。